時計の世界に入り込むと立ち向かわなくてはならないのがニセモノ問題です。特に中古や並行輸入に手を出すと偽物のリスクは無視できません。そこで、ひょんなことから私のところに持ち込まれた偽物 (コピー)ロレックスを分析し、どのようにしたら偽者を回避できるか科学してみたいと思います。
初めに明示しておかなくてはならないのは、私のところに持ち込まれた偽者はレベルの低い物だということです。いわゆるスーパーコピーと呼ばれるようなレベルのものではありません。
- 全体的な外観
外観が与える印象は本物と異なります。ステンレス部や金部分も全般的に艶がありません。もっとも違いがわかるのはブレスレットです。ブレスレットは艶が無いばかりではなく、強度も全くありません。下の時計のブレスレットは、バネ棒外しを使わずに、手でねじって引きちぎりました。実に簡単に破壊できました。本物のブレスレットの中古は古いものでも高値で取引されていることに納得感が あります。あの品質のものを安価に偽物では実現できないのです。
一方、 ケースの 重さはステンレス製では差は感じません。多くのニセモノくステンレスケースを採用しているのは重さの課題もあるのでしょう。 金では本物との重さの違いが出すぎるのでしょう。
- 文字盤、針
慣れている人であればすぐに偽物とわかるようです。実際、詳しい人に見てもらったところたちどころに本物とは異なるところを以下の様に指摘してくれました。
・文字盤のバランスがおかしい。
・こんな形の針はない。
・竜頭が大きすぎる。
・ROLEXの字体がおかしい。
・6時位置にあるべき「SWISS MADE」が無い
正直なところ、私のレベルでわかるところはそう多くはありません。6時位置にあるべき「SWISS MADE」が無いことはわかりましたが、全体のバランスの悪さや、針の形状に関する不審点を見分けるには修行が必要なようです。
- ムーブメント
もしかしてクォーツかも知れないかと思いましたが、耳を当ててみるとそうではないようです。しかし、ビート音が明らかにおかしいこがわかります。びぶ朗で測定したところなんと毎秒5振動! 現在のロレックスは毎秒8振動なので、全くありえない話です。さらに精度も強烈な進み傾向です。さすがの私も、これだけ違うと耳でも違いがわかりました。振動数は安い偽者を見分けるのに有効であると考えます。
また、針の動きも本物に比べて刻みが荒くなっています。
動作音は以下から聞けます。
次に、ムーブメントをみてみます。裏蓋を開けるのはお馴染みの万能オープナー、ゴムボール(100円)です。これを裏蓋に押し当てて左に回せば簡単に開きます。
中から現れたのはプラスチックの枠に囲まれたいかにも安そうなムーブメントです。なんと27jwelsの表示!!
27石なわけないと思いつつ、調べてみると、このムーブメントはslava 2427 27 jewels automaticというロシア製のもののようです。27石は本当なのかもしれません。
乱暴に調整を試みると簡単に一定の精度がでました。
この事実は安物のムーブメントを搭載した偽物でも、一定の度精度を出すことができることを示しています。もちろん、ムーブメントの美しさは全くありません。
別の偽物のケース
もう一本、偽物を見てみましょう。これはEXPLOREの偽物です。文字盤の出来はひどいものでバランスなどという前にインデックスが剥がれ落ちています。 ムーブメントにも美しさはありませ
- 一方で、ムーブメントはなんと毎秒8振動で本物と同じです。調整したところほぼ問題の無い精度が出ました。こうなってくると、精度、振動数での真贋判定は困難です。
偽物の毎秒8振動の音はこちら。
素人が偽物を見分ける際のまとめ
私のような素人がROLEXの偽物を見分けるポイントを整理します。
- 真贋判定は複数の要素をみて総合的に判断する必要がある。
- ブレスレットの質感は明らかに異なる。(偽物には艶がない)ブレスレットの強度も低い。
- 文字盤での見分けは素人に難しいが、6時位置の「SWISS MADE」の記載がないなど、明らかな差がある偽物もある。
- 竜頭は正確にコピーするのが技術的に難しいのか、簡単に分かる低品質のものが付いている偽物あり。サイズも異なる場合がある。
- 安物機械式ムーブメントでも精度を出すことは可能なので、精度での真贋は困難。ただし、振動数が本物とは異なる ことが多く、振動数を測定すればかなりの確率で判定可能。なれれば耳でも判定可能。(現行の本物は毎秒8振動。偽物は多くの場合は6振動以下。) 毎秒8振動の偽物もあるので油断は禁物。
- 偽物の安物ムーブメントは美しさが全くないので、裏蓋を開ければ確実に真贋判定が可能。
偽物ロレックスを利用した、帯磁試験の様子はこちら。(耐磁試験ではなく帯磁試験です!)